青い西瓜の日々

軸なきブログ

Nothing to Lose: Claudine Longet 〜 蒲鉾とボサノバと

「蒲鉾はトト(魚)から出来ているの?」
と、うぶなふりをした遊女の言葉がカマトトの語源らしい。

私が学生の頃はカマトトは「ぶりっ子」という言葉に取って代わられていたように思う。

蒲鉾もブリも同じ水産物なので互換性があるのかもしれない。

今回紹介するのはクロディーヌ・ロンジェの『ナッシング・トゥ・ルーズ』です。
1968年の映画『パーティー』の中で歌われています。


Claudine Longet - Nothing to lose (from The Party ...

Youtubeのビデオで歌っているのはクロディーヌ・ロンジェ本人で、主役はピーター・セラーズ。パーティー会場でおしっこを我慢して極限状態のピーター・セラーズ
でもクロディーヌが弾き語りを始めて皆が注目しているのでトイレに行けない。
と、いうような垢抜け無いベタなネタばっかりですが、この映画結構好きなんです。

この映画でクロディーヌは、ある下衆な監督に気に入られるも強要された関係を拒否してキャリアを棒に振る新人女優、という役柄を演じています。いかにも清純可憐という感じ。その上に囁き声でボサノバを歌うわけですからたまりません。


この人のボーカルはヘタウマというよりもむしろ下手なんですが、フランス語訛りの英語と頼りなげなウィスパーボイスが武器なのです。カヒミ・カリィはだいぶ影響を受けたんじゃなかろうか。

クロディーヌのアルバムは当時大ヒットしたらしく、Youtubeでもいくつかの楽曲が聞けます。
Beach Boysの名曲『God Only Knows』なんかもカバーしているんですが、ここで聴けるボーカルはもうかなりあざとい。頑張っておぼこい感じを演出しているように聞こえます。そして、ここに私はクロディーヌのカマトト振りを見るわけです。

『ナッシング・トゥ・ルーズ』は危ういところまで行っているがぎりぎりセーフ。そして、それがこの歌の魅力になっている。

女性によるカマトトの発明というのは、うぶを装い男性の保護欲を刺激し惹きつける、というテクニックが機能したが故なのでしょう。
しかし男だって馬鹿じゃないから、度を過ぎると芝居に気づいてうんざりするものです。だからカマトトというのはかなり高い技術を要求されるものだと思います。その点、クロディーヌはかなりの使い手と見ました。

さて、この『ナッシング・トゥ・ルーズ』、私には不倫の歌のように見えます。「待つ女」が不倫相手を優しく諭す歌。クロディーヌのような女性が歌う事で、健気さとその裏のしたたかさみたいな二重性の面白みがあると思うんだけど、穿ち過ぎかな?

いずれにしてもフランス人のクロディーヌは、蒲鉾が魚から出来ていることを本当に知らないだろうね。



Nothing to Lose 和訳、対訳、超訳

失うものは無いの
もし私達が聡明だったら
虹色の空を期待したりしないわ
今すぐにはね

失うものは無いの
楽しいかもしれないわ
日の当たる人生を望まないって事は
つい、そうしちゃうかもしれないけど

私達は知っているわ、時間が何を成し得るか
もし叶わない夢を持ったとしたら
二人して傷つけあうだけなの

何を失うことになるかしら
私達は知っているわ
この先ずっと、なんて話はやめましょう
いつの日か、でいいの

失うものは無いの
でも得るものは大きいわ
もし愛がここに在り続けさえすれば

失うものは無いの


原詩

Nothing to lose
If we are wise
We're not expecting rainbow-colored skies
Not right away

Nothing to lose
It might be fun
No talk of spending lifetimes in the sun
Although we may

Both you and I have seen what time can do
We'll only hurt ourselves if we build dreams that don't come true

What can we lose
We know the score
Let's wait before we talk of evermore
One day we may

Nothing to lose
But much to gain if love decides to stay

Both you and I have seen what time can do
We'll only hurt ourselves if we build dreams that don't come true

What can we lose
We know the score
Let's wait before we talk of evermore
One day we may

Nothing to lose
But much to gain if love decides to stay

Nothing to lose