青い西瓜の日々

軸なきブログ

マッチ売りの少女 / アンデルセン : 大晦日の夜の出来事

先日テレビで古いアニメーション映画『雪の女王』(1957年 ソ連)を観たのをきっかけに、アンデルセン作品のいくつかを青空文庫で読みなおしているのですが、これがめっぽう面白い。

 

青空文庫 『マッチ売りの少女』 H.Cアンデルセン作   大久保ゆう訳

 

『マッチ売りの少女』は大晦日の夜が舞台だったんですね。

まさに今日の話なんですよ。

作品発表は1848年との事なので、160年以上も前なんですが。

 

子供の頃は悲しい話、やるせない話という印象しかなかったのですが、今読むと少女の死は宗教的救済として書かれているのがわかります。

 

マッチの炎の中に現れたおばあさん。少女を愛してくれたたったひとりの人。

そのおばあさんに抱かれ、空へと昇っていきます。

 

「そして二人はふわっとうかび上がって、空の向こうの、ずっと遠いところにある光の中の方へ、高く高くのぼっていきました。そこには寒さもはらぺこも痛みもありません。なぜなら、神さまがいるのですから。」

 

                                             青空文庫 『マッチ売りの少女』より

 

ちなみに、本編には少女の母親が一切登場しません。

少女が母親の木靴を履くことで、母親の不在は暗示されています。

死んでしまったのかもしれないし、遠くへ行ってしまったのかもしれない。

いずれにしても、死んだおばあさんが唯一少女を愛してくれた人として書かれているあたりに、少女の不幸の深さがあるような気がします。

 

5分もあれば読めてしまう短編ですが、マッチを擦ると暖かいストーブやクリスマスツリーが現れるという発想は今読んでも素晴らしいし、少女がおばあさんを思い出すきっかけとなる流れ星が同時に少女の死を暗示しているところなど、構成の巧みさには唸ります。

 

子供だけに読ませるのはもったいないので、大人の方もぜひ。

(あと、青空文庫の関係者の方に感謝!)