Gary Gilmore's Eyes: The Adverts 〜 殺人者の眼
邦題は『ゲイリー・ギルモアの瞳』
瞳と言っても、キム・カーンズの『ベティ・デイビスの瞳』で歌われるような小悪魔的な「瞳」なんかじゃありません。 実在した殺人者ゲイリー・ギルモアの「眼」を題材にした1977年のパンクロックの曲です。
The Adverts Gary Gilmore's eyes - YouTube
ゲイリー・ギルモアは人生の半分以上を刑務所で過ごし、衝動的に二人の男を殺害して処刑された殺人者。 高い知能と絵の才能を持ち、死刑宣告後には当時アメリカにあった死刑制度廃止の流れに逆らい、自らを銃殺刑に処させた驚くべき男でもあります。
彼についてノーマン・メイラーは『死刑執行人の歌』を書き、ゲイリー・ギルモアの実弟マイケル・ギルモアは『心臓を貫かれて』を書きました。
『心臓を貫かれて』は、ギルモア一家の暴力と呪いの歴史、父親の虐待によって歪んだ人生を送ることになるゲイリーとその兄弟達について書かれた本で、私も数年前に読んでいます。救いの無い暗い話ですが、ぐいぐいと引き込まれます。
この本についてはまたいつか書くことがあるかもしれません。
さて、『ゲイリー・ギルモアの瞳』。
ゲイリー・ギルモアは処刑後使える臓器は献体したいと申し出たらしく、実際に彼の眼(角膜?)は誰かに移植された可能性もあるようです。
UKパンクロックの先駆アドバーツは、そのエピソードを聞いてこの歌を閃いたのでしょう。
一言で言えば、ゲイリー・ギルモアの眼を移植された男の歌です。
明確なストーリーのある、怪奇映画的な雰囲気の歌詞になっています。
私がこの曲を初めて聴いたのは80年代末あたり。パンクロックのコンピレーションアルバムに入ってました。当時はゲイリー・ギルモアなんて知らなくて、実在の人物だったとは思いもしませんでした。『心臓を貫かれて』を読んでこの歌を思い出した次第。
今回訳してみて、歌詞の内容を知ったわけですが、当時のゲイリー・ギルモアの扱いが垣間見れてなかなかに興味深いです。
Gary Gilmore's Eyes 和訳、対訳、超訳
俺は病院で横たわっている
ベッドの上に固定されて
胸には聴診器が
頭には手が押しあてられている
彼らは俺の包帯をほどく
俺は光に顔をしかめる
看護婦が不安そうに見ている
彼女はおびえて震えている
医者達は俺を避けている
全てが混乱して見える
イヤフォンで夜のニュースを聞く
ある殺人者が刑に処された
やつの眼は献体されたんだと
俺の病室は観察されている
俺は気付いた
俺は今ゲイリー・ギルモアの眼を通して見ているんだと
俺は憤って明りを叩き割り
ベッドをドアに押しやる
瞼をぎゅっと閉じ
もう何も見えなければよいのにと願う
その眼はあるメッセージを受け取り
俺の脳へと送り込む
皆と同じように見えているという保証なんて
どこにもありはしない
ゲイリー・ギルモアの眼を通して見ているのだから
ゲイリーに眼はもういらないんだ
ゲイリーと眼は切り離されてしまったんだ
原詩
I'm lying in the hospital
I'm pinned against the bed
A stethoscope upon my heart
A hand against my head
They're peeling off the bandages
I'm wincing in the light
The nurse is looking anxious
And she's quivering with fright
The doctors are avoiding me
My visions confused
I listen to my earphones
And I catch the evening news
A murderer's been killed
And he donates his sight to science
I'm looked into a private ward
I realize that I must be
Looking through Gary Gilmore's eyes
I smash the light in anger
Push my bed against the door
I close my lids across the eyes
And wish to see no more
The eye receives the messages
And sends them to the brain
No guarantee the stimuli
Must be perceived the same
When looking through Gary Gilmore's eyes
Gary don't need his eyes to see
Gary and his eyes have parted company