青い西瓜の日々

軸なきブログ

Bills / LunchMoney Lewis : 請求書

ビルズ!

ラジオから流れていた曲で、ノリの良さに一発で気に入ってしまった。


LunchMoney Lewis - Bills (Official Video) - YouTube

 

歌詞を読んでみると、請求書(Bills)の支払いに追われる男の哀しい日常を歌ったものですが、自虐のユーモアに満ちていて笑えます。それでも、カード払い云々のあたりは身につまされました。というのも、私も一時期同じような状況にあったからです。

 

割と最近ですが、病気で長く仕事を休んでいました。その頃の収入は健康保険でカバーされていたわけですが、支給額は給与の67%に過ぎません。もともと少ない貯金はみるみる減っていき、カード限度額に引っかかって支払い出来なかったらどうしよう、とお店のレジ前で心配した時期もあったのです。幸いな事に、無事に仕事に復帰できたおかげでとりあえず危機は回避できましたが。

 

そういえば、以前に訳したマーヴィン・ゲイの『インナーシティ・ブルース』でも、「空高く積みあがった請求書」という歌詞がありました。もしかしたら英語圏では割と請求書という単語もしくはテーマが歌詞にのるのかもしれません。

 

私が知る範囲で、請求書という単語が出てくる日本の歌は、ピチカート・ファイブの『憂鬱天国』だけです。

請求書が送られてる

仕事は今日またキャンセル

君はとうとう家出するの

 

やはり愛だの恋だのとは遠いところにある言葉なので、なかなか使われないのでしょう。一応、ネットで調べてみたら、渡邊奈央『請求書』という、そのものずばりなタイトルの曲が見つかりました。

大丈夫 私が

大丈夫 納めるから

大丈夫 明日には

大丈夫 私が片付けるから

昼食 気づけば

何も口にしていない

 

うーん、悲しい...

請求書をテーマにした曲が楽しいはずはないですもんね。でも、その逆転がこの『ビルズ』の面白さなのかもしれません。まあ、聴いてみてください。

 

<Bills: 歌詞、和訳、超訳

請求書だ!払わなきゃ!
だから毎日働いて働いて働いてるんだ
口があるから、食べなきゃならない
皆を食わせなきゃ
請求書だ!

 

請求書は机の上に積み上がり
まるで山のよう
子供達は駆け回り
お腹をぐうぐう鳴らしてる
今夜は満月
それで俺の女は吠え続けてる
5万ドル稼いで来なけりゃ
出ていくとさ

 

チキショーめ
なんてこった
なんてこった、チキショーめ

 

請求書だ!払わなきゃ!
だから毎日働いて働いて働いてるんだ
口があるから、食べなきゃならない
皆を食わせなきゃ
請求書だ!

 

朝起きて、頭をぶちつけ
ベッドの角につま先をぶつける
冷蔵庫を開けると、食べ物はどこにも無し
隣んちのいまいましい犬は、うちの庭でクソしてやがる
車に乗り込んでも、エンジンがかかりやしない
外はくそ暑いが、歩いて行くしかない
レジの列で、ばあさんの後ろに並びながら
俺は祈ってるんだ、カード払いが拒否られませんようにって

 

請求書だ!払わなきゃ!
だから毎日働いて働いて働いてるんだ
口があるから、食べなきゃならない
皆を食わせなきゃ
請求書だ!

 

それで俺の靴がさ、
そう、俺の靴の話なんだが
底がねえんだよ!

 

請求書だ!払わなきゃ!
だから毎日働いて働いて働いてるんだ
口があるから、食べなきゃならない
皆を食わせなきゃ
請求書だ!

 

<原詩>
I got bills I gotta pay
So I'm gon' work, work, work every day
I got mouths I gotta feed,
So I'm gon' make sure everybody eats
I got bills!

 

All these bills pile up my desk
They looking like a mount (Everest!)
All the little kids run around
I can hear their stomachs growl (grrr!)
It's a full moon out
And my girl just keep on howlin' (ooh, ooh)
She said she gonna leave me
If I don't come home with fifty thousand (fifty thousand?)

 

God damn, God damn, God damn, God damn
Oh man, oh man, oh man, oh man
God damn, oh man, God damn, oh man

 

I got bills I gotta pay
So I'm gon' work, work, work every day
I got mouths I gotta feed
So I'm gon' make sure everybody eats
I got bills

 

Woke up and I bumped my head
Stubbed my toe on the edge of the bed
Opened the fridge and the food all gone
Neighbor damn dog crapped on my lawn
Hopped in the car and the car won't start
It's too damn hot but I still gotta walk
Behind an old lady in the grocery line
Praying that my card don't get declined

 

God damn, God damn, God damn, God damn
Oh man, oh man, oh man, oh man
God damn, oh man, God damn, oh man

 

I got bills I gotta pay
So I'm gon' work, work, work every day
I got mouths I gotta feed
So I'm gon' make sure everybody eats
I got! (Bringin' everybody trouble!)

 

And my shoes, my shoes
I said my shoes!
Ain't got no sole

 

I got bills I gotta pay
So I'm gon' work, work, work every day
I got mouths I gotta feed
So I'm gon' make sure everybody eats

 

God Bless This Mess / Sheryl Crow : 反戦歌

シェリル・クロウの2008年のアルバム "Detours"の一曲目。

 


Sheryl Crow performing &quot; God Bless This Mess ...

 

アコースティック・ギター一本でさらっと歌っていますが、歌詞を訳して見ると印象よりもずっと重い内容です。最初に詩を読んだときに、一番の歌詞で歌われる「どこか遠くに行っていた兄(もしくは弟)」に何があったのかと不思議に思ったのですが、三番の歌詞で謎解きがされます。

 

そこでは9/11の同時多発テロについて触れ、それを理由にアメリカが始めた「虚偽に満ちた戦争」を糾弾しています。きっと、その兄は派兵され、壊れた状態で故郷に帰ってきたのでしょう。

 

戦争は割に合わない。

 

<和訳、対訳、超訳

父は廊下で

壁に写真を掛けている

母は台所で

キャセロール料理を作ってる

兄は昨日

どこか遠いところから帰ってきたけれど

以前の兄では無いみたい

虚空を眺めてばかり

何か醜悪なものを見てしまったのだろう

でも、それを語ることは出来ないみたい

 

全く酷い有様だわ

全く酷い有様だわ

 

街で職に就いた

電話で保険を売る仕事

ロバートとテレサ

そして郷里から来た二人の詐欺師と

電話先の誰もが、話す時間も無いみたい

皆あれやこれで忙しい

何かがすっかり失われてしまった

それで私は悲しいような気持ちになる

 

全く酷い有様だわ

全く酷い有様だわ

 

二つの高層ビルが崩れ落ちたあの日のこと

消防士と警察官と

そこらじゅうから集まった人々

煙は街を覆い

死者の数がかぞえられた

大統領は涙をにじませ

慰めの言葉を口にした

それから私たち国民を

嘘にまみれた戦争へと駆り立てた

 

全く酷い有様だわ

全く酷い有様だわ

 

<原詩>

Daddy's in the hallway

Hanging pictures on the wall

Mama's in the kitchen

Making casseroles for all

My brother came home yesterday

From somewhere far away

He doesn't look like I remember

He just stares off into space

He must've seen some ugly things

He just can't seem to say

 

God bless this mess

God bless this mess

 

Got a job in town

Selling insurance on the phone

With Robert and Teresa

And two con men from back home

Everyone I call up doesn't have the time to chat

Everybody is so busy doing this and doing that

Something has gone missing

And it makes me kinda sad,oh

 

God bless this mess

God bless this mess

God bless this mess

 

Heard about the day

that two skyscrapers came down

Firemen, policemen

And people came from all around

The smoke covered the city

And the body count arise

The president spoke words of comfort

With tears in his eyes

Then he led us as a nation

Into a war all based on lies, oh

 

God bless this mess

God bless this mess

ギリシャの西瓜男

夏休みでギリシャに来ています。

なんでこんなタイミングでわざわざ混迷のギリシャに、と同僚からは呆れられましたが、以前から計画していたのでしょうがないのです。

 

今回は義母宅でのんびり。毎日35度超えの暑さなので、昼間は家でごろごろしています。大都市からは遠く離れた田舎であり、あたりは至って静か。聞こえるのは蝉の声とトラクターの音くらいなもので、デモなんて無縁です。しかし、言うまでもありませんが、皆この先どうなるのか非常に不安を感じているようです。

 

ドイツでも日本でも、ギリシャ人は怠け者で借金を返さないのだから苦しんで当たり前というような論調を見かけます。でも、それはあまりにも一面的なものの見方でしょう。ギリシャ危機の大きな要因の一つはユーロの構造的欠陥によるものだと思います。

 

例えて言えば、今の状況は狼と羊を同じ柵の中に入れるようなものです。狼は産業の強いドイツ、羊は産業の弱いギリシャ、柵はユーロです。競争力のある製品群でギリシャを市場化したドイツは肥え太り、反対にギリシャは痩せ細り自国の産業も弱体化してしまった。以前なら自国通貨ドラクマでの金利政策により対処することも出来たのでしょうが、ユーロ圏という一つの柵の中ではそれが出来ないのでにっちもさっちも行かなくなってしまった。

 

もちろんギリシャにも不備は沢山あって、特に汚職と脱税は大きな問題です。税収が上がらないから、財政は悪化するし、富の再分配も機能しない。そんな中での緊縮策ですから、割を喰うのは経済弱者ばかりという構図です。そんな生活に苦しむ人たちのデモを見て「そこまでして働きたくないのか」と言うのはあんまりだと私は思うのです。

 

果たしてギリシャは、そしてEUは解を見つけることが出来るのか。それともギリシャとともにユーロは破たんして、欧州を、世界を巻き込む恐慌を引き起こしてしまうのか。心配しながらこのギリシャ危機の成り行きを眺めています。


さて、休暇の話。
義母の庭には色んな果物の木が植わっています。

庭に果物があるってのはいいですね。なんだか豊かな気持ちになります。

 

葡萄。

 

ざくろ

 

いちじく。

 

マルメロ。

 

梨。ちょうど収穫時期のようです。
蜜をたっぷり含んでいて、梨ってこんなに美味しいのかと認識を新たにしました。

 

 

あと、買い物だけど西瓜も美味い。ほぼ毎日食べてます。
ドイツではハズレが多いのであまり食べませんが、ここでは胸をはって西瓜男を名乗れそうです。

 

果物じゃないけど、トケイソウ
自然はよくこんな形を思いつくもんだと感心します。

 

 

 

こうやってダラダラと休暇の日々は過ぎていくわけですが、充電しているのか放電しているのか自分でもよく分かりません。まあ、いいや。暑いからフラッペでも飲んで、ゴロゴロしよう。

みゃーくふつ

あきさん(id:sprighascome)からのリクエストにお応えして、方言の話。

 

「みゃーくふつ」とは宮古口、つまり沖縄は宮古島で話される方言の事です。

 

私は宮古島に生まれたのですが、赤ん坊の頃に沖縄本島に移ったので、宮古口をほとんど解する事ができません。父も母も宮古島の人間なのですが、私たち子供達には「うちなーやまとぐち」で喋っていました。ですから私が喋る方言というのは「うちなーやまとぐち」なのです。

 

「うちなーやまとぐち」とは沖縄大和口。沖縄本島の方言が標準語で薄まったもので、今や沖縄では年寄り以外は皆これを喋っています。おそらく日本国中、方言というのは薄まりつつあるのでしょう。テレビ、ラジオによる標準語の普及、核家族化による方言の断絶、つまり時代の流れです。

 

父と母は二人の会話の時は宮古口を使っていたし、親戚たちが集まると耳にしますので、私も宮古口が全く分からないというわけでも無いのですが、あくまでカタコトレベル。つまり私にとって宮古口というのはほぼ外国語にも等しいのです。

 

そういう距離感もあり、宮古口って変わっているなあという感じで聞いていました。例えば特殊な「ぴ」の発音があります。「冷たい」の宮古口を文字にすると「ぴぐる」となりますが、実際に聴くと全然違います。PにS音かZ音が混じるのです。ローマ字で書くと"pzigr"という感じで、私は未だに発音出来ません。

 

「ん」で始まる言葉もいくつかあります。

例:「んぎゃます」=「うるさい」

そして「っ」で始まる言葉も。

例:「っふぁ」=「子供」

「ん」や「っ」で始まるなんて、裏打ちのリズムっぽくて面白い。

 

他にもユーモラスな響きの言葉がたくさんありますが、最後に一つだけ。

 

「にゃーん」

 

無い、って意味です。まあ、これは日本語を語源としている感じはありますね。

にゃーん、という時には両の手のひらを頭にかざして猫耳を模し、首を傾げながら、可愛く言うのが本式です。もし、宮古島に行くことがあれば試してみてください。

ふふふ。

Perfidia / Phillis Dillon : 浮気なあなたにさようなら

フィリス・ディロンの1967年の曲『パーフィディア』です。

このあたりの古いスカ、ロックステディ、レゲエ(と分類はされていても根は一緒なんで皆似通っている)が私は好きなのですが、これは特に大好きな一曲なのです。

 


Phyllis Dillon - Perfidia - YouTube

 

歌詞を訳してみると、恋人の不実を嘆き、別れを決める歌です。曲調から、ほんわかとしたラブソングを想像していましたが全然違いました。悲しい歌詞ではあるのですが、スカ・ロックステディの「んちゃ、んちゃ」というリズムとフィリスのボーカルのおかげで、ややしっとり、でも割とお気楽な感じに仕上がっています。大変だけどこの調子ならじきに立ち直るよな、ドンマイ、ドンマイ、という感じです。

 

もともとスタンダードの曲で、Youtubeで探すと色んな人がいろんな風に歌っていて面白いです。なんとベンチャーズの演奏もありました。

 

それにしても不実なんて書くとちょっと古臭い感じがしますね。少なくとも日常で使う言葉ではないでしょう。今なら浮気とか二股とか言うのでしょうが、それだとカジュアルすぎて詩にはそぐわない気がします。なんてことを考えていると訳詩だってなかなか手間がかかるものです。面白いですが。

 

Perfidia: 歌詞、和訳、超訳

 

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ロバの耳

ドイツ語でEselohr(ロバの耳)とは本のページの角を折ったものを指します。栞代わりのアレです。英語だとDog Ear(犬の耳)だそうで、かたち的にはそちらの方がしっくりきます。どうしてドイツ人は細長いロバの耳に例えたのだろう?


先日『Eselohren』という本を貰いました。Eselがロバ、ohrenは耳の複数形、つまり「ロバの耳」です。

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表紙をめくるとページの角を折るように書いてあり、それが最後のページまで続きます。

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全ページの「ロバの耳」を折っていくと本の中にロバが現れるという仕掛け。

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良く出来てる。


ところで西洋ではロバは愚鈍さの象徴ですが、黙々と荷を運ぶけなげな姿と意外に可愛いその顔つきを見ると、不当に貶められているようでちょっと可哀そうな気もします。


もっとも、そう扱われても「俺、気にしてないっすから」とひたむきに仕事をするのがロバであり、それはロバ的特質における美点の一つではないかと思います。

 

その愚直さ故に、ブラック企業に搾取される心配もあるのですが、気をつけなよと親身にアドバイスしても「ロバの耳に念仏」なのが歯がゆいところです。

Inner City Blues / Marvin Gaye : 都市のブルース

久しぶりに訳詩など。

 


Marvin Gaye - Inner City Blues (with lyrics) - YouTube

 

マーヴィン・ゲイの『インナーシティ・ブルース』です。インナーシティとは都市部、都市近隣部、文脈によってはスラム街を指すそうです。

 

1971年発表のアルバム『What's Going On』の最後に収録された曲で、歌の中でもアポロ計画ベトナム戦争について触れられています。あいつら=持つ者=権力者/富裕層、俺ら=持たざる者=貧困層、という図式で歌われます。

 

タイトルのインナーシティという言葉をどうとるかですが、私にはスラム街に限定せず、都市部と訳してもしっくりくるように思えます。少なくとも今日現在では。もともと黒人のものだったブルースですが、ここで歌われるのは人種を超えた、白も黒も黄色も無い、貧困に苦しめられる人々全てのブルースであると私には読めるからです。

 

経済に疎い私でも、ウォール街占拠のニュースは耳にしたし、アメリカで所得格差が問題となっている事は知っています。そういう意味ではこの歌は発表当時と比べても、より多くの人にリアリティを持って聴かれるのではないでしょうか。

 

このあとマーヴィン・ゲイはエロ親父化していくわけですが、エロくなければこの困難な時代を生き残れない、という彼なりの信条がそこにはあったのです。

なんつって。

  

Inner City Blues: 歌詞、和訳、超訳

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