『2001年 宇宙の旅』 についての感想あれこれ
前回に引き続いて『2001年 宇宙の旅』の話。
■前回:『2001年 宇宙の旅』 HAL9000が好き - 青い西瓜の日々
この映画の分かりにくさはキューブリック監督が意図したものらしい。
全編にわたってストーリーを解説するナレーションを入れる予定であったものが、過剰な説明が映画からマジックを奪うことを恐れたキューブリックが、インタビューもナレーションもすべて削除してしまったため、何の説明もない映像が映画全編にわたり続くことになったからである。
でも、あまりに観客を突き放しすぎ。あれじゃ分からんて。
だから一つの映画の出来としては微妙じゃないかと思ってます。
それでもこの映画が今も人々に鑑賞され、議論のネタとなるのは、映像が観客を魅了するからだと思うんですよね。
1968年の当時にこのレベルの映像を撮ったのは凄い。
というのもありますが、46年後の今でも通用するクオリティなのがまた凄い。
まず、セットのデザインや大道具小道具などの美術がいいんですよ。
単に未来的なだけじゃなく、とてもスタイリッシュなんですよね。
キューブリックの美的センスのたまものでしょう。
HAL9000の内部は真っ赤なライティングがカッコよくてくらくらしました。
宇宙ステーションのラウンジは今見るとレトロフューチャーという感じ。
まるまるっとしたソファーとかね。だがそれがいい。
あと月に行くシャトルとか。
今では飛行機の各シートにエンタテイメント用の液晶ディスプレイが普通についていますが、それを1968年にやっていたのは凄いなあと思いました。
私はこの映画を機内で観たので、「おお、まさにコレ」と思ったのです。
表示装置の話をすると、映画の中のそれは徹底してフラットスクリーンです。
テレビ電話とかコントロールルームとか全部そう。ブラウン管しかなかった当時、ここまでするのは凄い。背面から投射してフラットスクリーンに見せかけているとの事ですが、結構な手間暇でしょう。
美術が印象的なSF映画というと『ブレードランナー』もそうで、酸性雨が降り続く猥雑な未来都市像を作り上げました。
この間久しぶりにテレビで観ましたが、空飛ぶ自動車スピナーのコックピットにあるスクリーンはブラウン管でしたよ。
リドリー・スコット監督が「未来でもブラウン管は使われるのだ」と思っていた可能性だってありますが、おそらくは「一瞬しか映らないんだから、手軽にブラウン管でもいいんじゃないの」という感じだったんじゃないでしょうか。
まあ、予算とか時間を考えたらそれが普通かも。その分キューブリックの完璧主義さが見えてくるように思います。
ガジェット関連でいえば、iPadのデザイン模倣とアップルに訴えられたサムスンが「タブレットは『2001年』ですでに登場しているじゃないか」と反論した件がありましたね。
サムスン、iPadのデザインは映画『2001年宇宙の旅』に既出と主張 (動画) - Engadget Japanese
アラン・ケイのDynabook構想が1972年ということを考えても、60年代に情報端末を予見していたというのは大したもんです。アイデア自体は科学者の誰かさんのものかもしれませんが、それを映像化したのが偉い。
特撮もいろいろな工夫があったようで、ネットで探すといろいろ出てきて面白い。
シャトル航行中の無重力状態の中、ペンが宙に浮かぶシーンがあります。
どうやって撮影したんだろうなー、という疑問と同時に、ここで寝ながらよだれ垂らしたら宙を漂うんだろうなー、という心配が頭をかすめました。
むかし飛行機の中で爆睡して、よだれでネクタイを盛大に濡らしてしまった私ならではの心配なのかもしれません。
皆さんもよだれには気を付けましょう。(結論)